松澤ゼミ、宮島、広島、呉、竹原にて合宿を行いました!
グローバル経済を学修する松澤ゼミが、2年生から4年生まで合同で、広島県下で9月19日~21日の2泊3日でゼミ合宿を行いました。
今年は5月に広島でG7が開催され、またウクライナ戦争は1年半を経過したものの終息が見えず、むしろロシアの核兵器使用の威嚇もある状況下、我が国の被爆の経験を知る必要があること、またグローバル企業であるマツダの拠点であり、地域経済で見ても宮島や竹原といった観光地を有していること等から、広島をテーマとした学習活動の一環として訪問したものです。
初日は広島到着後、広島市内で平和祈念資料館、「原爆ドーム」を見学しました。留学生も含め参加したメンバーは初めての訪問で、8月6日に一瞬で生活が失われた犠牲者の様々な遺品やその後の後遺症等、惨禍を映したパネル等に言葉を失いつつも、日本が「核の傘」の下の均衡にある難しさも痛感しました。
次いで路面電車から郊外へと直通する広島電鉄とフェリーで宮島町へ渡り、世界遺産?厳島神社を訪れました。宮島への道中はインバウンドの観光客が戻ったため、大混雑でバリアフリー?低床車両の電車も乗り降りで時間を要して大幅に遅延し、オーバーツーリズムによる日常生活への負の影響が懸念されました。
厳島神社にて。
干潮で普段とは異なる風景のもと、童心に帰りました???
2日目はマツダ本社を訪ね、歴代のマツダ車が展示されるマツダミュージアムと生産ラインを見学しました。ミュージアムでは館長も館内ツアーに同行され、要所要所で戦後の広島という都市の復興、成長のあゆみとマツダの発展を重ね合わせた説明がありました。特に、「自動車というのは平和あっての乗り物だ」、との結びの言葉が印象的でした。
続いて生産ラインへと移動しました。ゼミ生たちが息をのんだのは、「多品種混流生産」と呼ばれるマツダ独自の生産システムでした。これは異なる車種の生産を一つのラインで行うことで効率的なラインのオペレーションを実現させるものです。実際に、ガソリン車の次にEVの車体が流れてきて、作業員の方が難なく手際よく組み立てていく様子は圧巻でした。
マツダ本社にて
実車に試乗!ただし動きません???
午後はいよいよ、2023年G7広島サミット会場へ移動です。広島市内?元宇品地区の宇品島に立地するグランドプリンス広島へは、陸路では一本道しかなく、またその周囲は海のため、要人の警備の観点でふさわしかったことが実際にアクセスしてよく分かりました。
グランドプリンス広島?各国首脳の記念撮影が行われた場所で。
各国首脳の着席したテーブルが今も残されています。
次いでゼミ生は、それぞれの関心あるテーマごとの見学行動へと別れました。
鉄道と地域経済に関心をもつグループはJR芸備線と可部線沿線を訪問しました。JR西日本は山陽新幹線、北陸新幹線の上越妙高以西、京阪神の都市圏といった高密度の旅客輸送もありますが、中国地方の特に山間部のローカル線の経営では困難が生じています。可部線は広島市内の可部駅以北が2003年に廃止、また芸備線も三次市以北が深刻な輸送の減退が進んでいます。そこで、広島市近郊での両線を視察しました。両線は太田川をはさんで安佐北区までほぼ平行しています。芸備線は高校生の終業時刻で相当混雑していました。下深川からバスで対岸の可部地区に移動し、2003年に廃止されたものの地元の要請で2017年に部分的に復活した可部~あき亀山間に乗車しました。あき亀山駅は総合病院の開設と一体となった駅前整備が行われ、住民だけでなく病院利用者の利便性も鉄道の復活で確保された様子がよくわかりました。
芸備線?下深川駅
可部線?あき亀山駅
一方、プロスポーツの経営、地域経済への波及に関心をもつグループは、プロスポーツのマーケティングの好事例である「カープ女子」を体験するため、マツダスタジアムを訪れました。ゼミ教員が学生の頃とは全くイメージが変わり、カープの女性ファン層が定着。また元々市民球団として発足した経緯があり、全国人気とは言い難かったのですが、ファン層が着実に他県へと拡大。スタジアムでの観戦を目的とした旅行需要が発生しているなどの、地域経済への貢献を肌で体験できました。
マツダスタジアムにて。残念ながら?1-3でベイスターズに敗北。
最終日は広島市を離れ、まず呉市の「大和ミュージアム」を訪問しました。呉市は戦前は軍港と軍艦の建造が基幹の町でした。海軍最大の戦艦?大和も呉で建造され、最期も呉から出航。この大和の悲劇も含め、日本の海軍の展開と戦争の惨禍を伝えるのがこの博物館です。大和と最期を共にした乗組員の多くはゼミの学生と年齢は同じくらいで、その遺書には深く胸を打たれていました。
プロムナードを抜けると、退役した巨大な潜水艦のお出迎え。
大和ミュージアム?戦艦大和の1/10模型
午後は、江戸時代から製塩と酒造、北前船を通じた交易で栄えた竹原を訪れました。広島市、呉市とは異なり戦火とは無縁だったので、酒蔵や土蔵なども含め古い町並みが保存され、観光資源となっています。しかし平日とはいえ、観光客は我々以外には数組しかおらず閑散としていました。オーバーツーリズムの背景に、いわゆる「ゴールデンルート」への集中が指摘されていますが、そこから外れた地域の観光資源をいかに魅せるか、学生たちが大学に持ち帰っての「宿題」となりました。
白壁と石畳の街並みが続く竹原の保存地区
庇の下でネコが昼寝する、長閑な時間が流れていました。
その後、全ての日程を終えて一行はJR呉線を三原まで乗り通し、帰途につきました。呉線は瀬戸内海に沿って走るため、風光明媚な路線として記憶に残ったようでした。しかし竹原へは週末に観光列車が広島駅から直通するほかは普段は乗り換えを要し、本数も減便されて、また日中は駅員不在の時間もあるなど、インフラが通じていても観光のアクセスとして活かし切れていない感想も持ちました。
3日に渡る広島をテーマとした実地調査の合宿でしたが、それぞれが気付いた点を課題として、後期の学修や卒業論文の作成につなげていくこととなります。最後に、協力頂いた訪問先の皆様にお礼申し上げます。
(文責)松澤祐介