中小企業向けセミナー「SDGs時代の脱炭素経営」を開催しました。
1月31日(水)開催
西武文理大学サービスイノベーションセミナー
『SDGs(持続可能な開発目標)時代の脱炭素経営』
第1部
『SDGsアンケート調査の速報』
西武文理大学サービス経営学部 藤野 洋 教授
『狭山市の中小企業等向け脱炭素?省エネ支援制度について』
狭山市環境経済部 狭山サステナビリティ?トランスフォーメーション推進チーム
岸 学 氏
第2部
【基調講演】『当社のSDGs~人づくり?環境?社会への貢献~』
マテックス株式会社 代表取締役社長 松本 浩志 氏
第3部
【ディスカッション】『SDGs?脱炭素の経営と社会へのインパクト』
松本 浩志 氏 × 藤野 洋 教授
●アンケート速報 SDGs「具体的な目標の策定や評価がわからない」が課題
第一部では、西武文理大学サービス経営学部の藤野洋教授が、狭山市商工会議所の会員を対象に行ったSDGsや脱炭素についてのアンケート調査について報告しました。
SDGsへの取り組みについては、取り組んでいる企業が5割弱と半数に達していないことが分かりました。取り組んだ企業が成果として感じている点については、「企業イメージの向上」「地域住民や社会との関係強化」「業務改善?コスト削減」を2割ほどの企業が実感している一方で、「売り上げの増加や新規顧客開拓」に繋がっていると感じている企業は少ないことが分かりました。また、SDGsに取り組むにあたり課題があると答えた企業は8割。課題の中でも「具体的な目標の策定や評価がわからない」が最多となっていました。
● アンケート速報 脱炭素への取り組み 狭山市の支援策の認知度は半数にとどまる
脱炭素(カーボンニュートラル)への取り組みについてのアンケートでは、既に省エネ等に取り組んでいる企業が4割あり、追加の取り組みを検討しようとしている企業も2割程ある事が分かりました。ただ、ほとんどの企業で、取り組むには課題があると感じており、具体的には、「投資?運営コスト増」「必要なノウハウ?人材不足」が課題と分かりました。また、環境ビジネスについては、関心があるものの情報収集段階である企業が7割を占めており、環境ビジネスはハードルが高いと捉えている企業が多いことが分かりました。
また、狭山市には、脱炭素の支援策がいくつかありますが、それについて「知らなかった」が過半数を超え、周知強化が必要であることが浮き彫りとなりました。
SDGsも脱酸素も、多くのステークホルダーが参加すること?自社だけでなく仕入れ先などにも要請することが必要であると、藤野先生は強調します。このようなセミナーも含め、認知度を高める取り組みは、ますます必要であると感じます。
●狭山市の中小企業支援策をチェックしよう!
第1部の後半は、狭山市環境経済部の狭山サステナビリティ?トランスフォーメーション(SSX)推進チーム 岸 学 氏から狭山市の現在置かれている状況と、具体的な支援策についてご説明頂きました。狭山市は2015年に周辺の4市と共同で、「ゼロカーボンシティ共同宣言」を表明し、2050年までにCO²などの温室効果ガス排出ゼロを実現するとしています。「排出ゼロ」とはCO²などの温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成することです。
岸氏によると、狭山市は、年間111万トンの温室効果ガスを排出しており、特に産業部門では、埼玉県63市町村中1位の排出量となっているとの事です。
狭山市には大きな工業地帯が2つあり、地域にとって恩恵がありつつも、温室効果ガス排出量が多いことが地域の課題となっています。
そこで、狭山市の支援策。まずは、自社の「排出量を知ることから始めよう」という所に注力し支援策を打ち出しています。具体的には、『狭山市中小企業等温室効果ガス排出量可視化補助金』です。自社で排出する温室効果ガスの排出量を可視化、把握する手段として、民間事業者が提供する「温室効果ガス排出量可視化サービス」を新たに利用する事業者の方へ、サービスの利用料を補助する、という支援策です。
他にも、以下の2つの支援策があります。この3つは、「何から始めたらよいか分からない」中小企業の皆様にとっては、第一歩を踏み出す機会になると感じます。狭山市のホームページで是非チェックしてみてください。
★狭山市中小企業専門家活用補助金
★狭山市クリーンエネルギー推進補助制度
●「窓から日本を変えていく」マテックス株式会社の取り組み
セミナー後半は、第2部で、マテックス株式会社の代表取締役社長 松本 浩志 氏による基調講演「当社のSDGs~人づくり?環境?社会への貢献~」そして、第3部で「SDGs?脱炭素の経営と社会へのインパクト」と題し、松本社長と藤野教授とでディスカッションをして頂きました。
マテックス株式会社が、どのように経営理念やパーパス(企業の社会的な存在価値や社会的意義)を社内に浸透させ、SDGsや脱炭素に取り組んでいるのかをご紹介頂きました。その先進的な取り組みは、これから活動をスタートさせる中小企業にとって学びの多いものばかりだったと感じます。
一部を紹介させて頂くと、マテックス株式会社では、経営理念の一つ目に「窓をつうじて社会に貢献する」を掲げており、2009年に非営利団体「エコ窓普及促進会」を設立し、省エネ効果の高い「エコ窓」の普及促進を図ることで、地球温暖化防止のための活動を行っています。ビジネス目的ではない事を周知し、活動に対する信頼を得ることに繋がっています。
また、『cycleglas(サイクルグラス)』という環境ビジネスも、特筆すべき取り組みの一つです。昭和40~50年にかけて大量生産された繊細で美しい柄をもつ、昭和レトロな片板ガラス。建築現場などで廃棄されるはずだったガラスをレスキューして、リユースすることで、ガラス製造過程でのCO²排出量を大幅に削減できると言います。
更に、社内で、お菓子を食べジュースを飲みながら社員と話す経営理念浸透カフェを実施したり、考え方をシェアする大規模な社内イベントの実施、お父さんお母さんの仕事を紹介する家族の職場訪問イベント、出張授業などを実施していることが紹介されました。
マテックス株式会社では、家庭?職場以外で、気軽に気分転換できる場所=サードプレイスの創出も始めています。
詳しくはマテックス株式会社のホームページをご覧ください。
戦略的に社員のモチベーションを高め、どう社員の成長?会社の成長に繋げるのか、学びの多いお話となりました。
本学の藤野洋教授、そしてSIC(サービスイノベーションセンター)は、今後も、引き続き中小企業へのSDGs、CSR(企業の社会的責任)、脱炭素に向けての取り組みについて研究?普及活動を行っていきます。
(入試広報課 中川)
藤野 洋 教授(サービス経営学部) 一橋大学経済学部卒業後、商工中金を経て一般財団法人商工総合研究所に入所。商工中金では、渋谷、仙台、熱田の3支店で中小企業金融の現場を経験し、本部で調査業務に従事。また、同社在籍時には社団法人日本経済研究センター(当時)と東京商工会議所(東商)に各2年間出向。商工総合研究所入所後は、中小企業の産業?金融構造の調査及び情報提供事業に従事。2020年から西武文理大学で教鞭をとりながら、中小企業のCSR?SDGsの研究?普及活動を行っている。 |
SIC(西武文理大学サービスイノベーションセンター) 開学20周年を迎えた2019年度に開設。SICでは、地域の知の拠点として、研究シーズをもとにした産官学の連携や地域への貢献をその柱に掲げ、各教員の研究シーズを育て、プロジェクトへの展開を図るために、情報交換や学術交流、専門的分野横断的な共同研究、教育活動を積極的に支援しています。
SICセンター長 甘泉 瑞応 教授 |