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武州工業株式会社訪問

サービス経営学部 藤野ゼミの2年生が武州工業株式会社を訪問

サービス経営学部 藤野ゼミの2年生が武州工業株式会社を訪問

サービス経営学部の藤野洋教授(専攻:中小企業論、持続可能な開発目標(SDGs))と藤野ゼミの2年生3人が202487日に武州工業株式会社(東京都青梅市)を訪問しました。

同社への藤野ゼミの学生の訪問は2023年の4年生に続いて2回目になります。
訪問の目的は、ゼミで行っている論文作成の練習のための情報を聴取することです。

同社は、自動車用や医療機器用の金属パイプ部品、半導体製造装置の筐体などの生産を行っており、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の活用など、様々な取り組みで高い生産性の実現していることなどで、多くの表彰を受けている企業です。

最初に、先代社長である林 英夫相談役から、あらかじめお知らせしていた学生からの質問へのご回答を含めて、当社の概要について以下のようなご説明をいただきました(抜粋:順不同)。
(向かって左側奥が林相談役、右側が学生)

?「地域の雇用を守る」という使命感を持っており、そのためには利益を計上し続けること、そして納税することが重要と考えている。当社は黒字経営を50年以上連続しており、優良申告法人として税務署から7回表敬されている。

?当社の製品は、かつては金属パイプを加工する自動車部品がほとんどだったが、パイプ加工の技術を生かして医療用機器(内視鏡関連)に進出した。さらに、コロナ禍の時期に自動車関連の生産活動がストップしたこともあり、近隣のトランスメーカーに従業員を派遣したことをきっかけにして、半導体製造装置関連にも販路を広げ、現在の売上高は自動車部品が3割、医療用機器が5割、半導体製造装置が2割となっている。今後は半導体製造装置関連が伸びると予想している。

?当社は1カ月に900種類の製品を90万個生産しているが、例えば1台の自動車には1個しか使用されない。エンドユーザーに迷惑をかけるわけにはいかないので、最高級車でも軽自動車でも同じ品質の製品を作ることをモノづくりの基本としている。このため、不良品を最少化すなわち歩留まりの引き上げに力を入れている。

?現在日本の労働生産性は先進国で最低であるが、その背景には、日本の産業全体にいえることだが、「良いものを安く」というマインドが染みついていることがある。日本の産業?経済?生活水準を発展させるためには「良いものを適正な価格で」というマインドセットに切り替える必要がある。これには「適正価格」で販売しても利益を出せる競争力が必要であり、個々の企業が生産性を引き上げることが重要である。加えて、当社が既に様々な分野で力を入れているSDGsへの対応も日本だけでなく地球全体の持続可能性維持のために重要であり、これにも生産性向上が不可欠である。

?当社の特徴的な生産方式である「一個流し生産」は自社製のミニ設備という機械を半円状に配置して、その設備を技術者が加工手順に応じて操作する。いわば生産ラインを一人の技術者が多能工として担当している。さらに、材料管理、品質管理、出荷管理も一貫して対応している。このような事業全体のプロセスを「見える化」「効率化」するための「デザイン思考」によって、生産性向上を実現している。
(出所)同社Web



?「見える化」の過程で、特に従業員の製品検査の精度が昼食後に眠気が出る時間帯に下がることがわかった。つまり、人間による製品検査ではヒューマンエラーは取り除けないため、品質の閾値が上がりすぎ過剰品質による廃却品が増える。これを改善して生産性を向上させるために、AIによる不良品検出のシステムを開発?導入している。AIは、廃却品の減少を通じて資源の節約や環境保護などSDGsにも寄与している。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも力を入れており、20236月にはDX認定も受けた。

(注)DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス?コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、本制度に関わる「DX認定制度事務局」として、各種相談?問合せ対応及び認定審査事務を行っている(経済産業省Webhttps://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html(202488日閲覧))。

?生産性を高めるために、人材育成に力を入れている。最近の例では、希望した従業員をコロナ期にトランスメーカーに派遣したが、当社での生産活動が再開された際には、派遣先で得た技術を生かして半導体製造装置関連の事業起ち上げに貢献してくれた。また、その技術を社内の別の部門とも共有することで、社内全体の技術レベルが向上した。また、現在は150人の従業員の内、約50人がミニ設備の開発や生産プロセスの研究など、34人がAIの高度化を研究している。このような形でも人材育成に取り組み、人間でなければできない仕事に力を入れている。

?また、従業員の生活にも配慮している。その例が「8.20体制」(18時間、1か月20日勤務で残業を無くし、休日をしっかりとりましょう)という社内活動をおこなっており、昨年度は1週間の途中の曜日の祝日も休日にすることによって年間稼働日数234日を実現した。

(注)自動車製造業では、電気炉?乾燥炉のような設備をいったん停止すると再稼働に時間?コストがかかるため、1週間の途中の曜日の祝日も稼働することが少なくない。

?また、コロナ期においても、公的な補助も利用して、他社に派遣された従業員だけでなく、自宅待機の従業員にも給料を100%支給した。さらに、利益の半分は期末賞与として従業員に還元している。

?さらに、地域貢献?社会貢献にも力を入れている。地元の花火大会での大きな仕掛花火の協賛、地元教育機関からのインターンシップの受け入れだけでなく、様々な地域?組織に対して、当社の「モノづくり」「生産性向上」に関する講演活動?見学会の受け入れなどを、「適正価格」の見地から有料で行っている。さらに、「地域の雇用を守る」ために、地元企業をメンバーとして本社内に設けた「武州庵」(説明を受けた建物)で生産性向上のための講話なども行っている。

?以上のようなことから、当社は「日本でいちばん大切にした会社」大賞審査委員会特別賞(2017年)や「地域未来牽引企業」選定(2018年)など、多数の分野で評価されている。
(林相談役からのご説明の様子)

 ご説明の後に、本社工場を林相談役にご案内いただき一個流し生産やAIによる不良品検出の現場や事業再構築補助金を利用して導入した半導体製造装置関連の最新鋭の板金関連の機械設備などを見学しました。その過程で、社内での人材育成の実態と同社の生産体制が絶え間なく高度化している様子がわかり、同社の高い生産性につながっていることもわかりました。
(林相談役のご案内による本社工場の見学)
工場見学後には、学生との間で質疑応答と意見交換を行い、林相談役から丁寧なお答えをいただきました。

林相談役をはじめとする武州工業株式会社の皆様のご厚意で、訪問した学生は、地域の企業の経営と生産活動の現場を直にみるという貴重な経験と論文作成の練習にとって参考になる多くの学びを得ることできました。

なお、同社については、藤野教授が紹介した以下の記事もご覧ください。
「人材育成とICTで飛躍 高生産性サプライヤー」元気das® biz2022920日発行(編集?発行所/㈱シーズン元気das® biz編集室)
(リンク)https://season-inc.net/genkidasbiz/220920/kirameki.html